たまに書くかもしれない

(年齢だけは)大人のジャニオタの吐き捨て場的なもの

『奏劇vol.3 メトロノーム・デュエット』観てきた

作曲家の岩代太郎さんが企画された舞台なのですが、演劇だけではなくそこに演奏が融合された、摩訶不思議な感覚が味わえる舞台です。

高橋克実さん、斉藤由貴さん等錚々たるメンツの中に文ちゃんと寺西。

音楽には支配力がある、が口癖の教授が、恋する相手を洗脳しようと思っていたら逆に取り込まれてしまった。文字で表現すると滑稽にも感じる作品で、確かに滑稽でもあるんだけど、舞台装置やピアノ・チェロ・アコーディオンの演奏と役者の熱演が揃うと、それはそれは恐ろしい作品になるという。

まぁ想像通りだったけど、克実さん演じる教授の、恋するお相手・村田を演じた斉藤由貴さんの怖さといったらない。彼女が教授に持ちかける「お誘い」の熱心さと狂気、凄かったんですよね。取り込まれた教授を、教授が座っていた椅子に座りながら見つめる村田の表情がとんでもなかったです。美しく、ゾッとする。衣装がまたショッキングピンクのブラウスに濃い緑のスカートでパンチがあって、それに負けない美しさよ…圧倒されちゃったよねぇ。

しかもこの美しさと熱心さと狂気が、たとえば占い師だったりとか霊媒師だったりとか、なんていうかちょっとフワっとした話じゃないところが生々しくて怖いんだよね。村田は政治に関わっていて、その政党の支持率がここのところ落ちてて危機感覚えているから教授に目を付けた。「一緒に、すばらしい国を、つくろうよ!!」これを繰り返す村田がめっちゃ怖いの。「つくろうよ!」っていうその言い方~あれが一番セリフで怖かったな。我々が生活するこの世界と地続きな感じがよく出ていて、リアルだった。政治の世界へ熱心に誘う村田と、村田の心を掌握したい、自分のものにしたい、恋する相手を我が物にしたいだけの教授、ずっと話が平行線なんだけど、根っこが同じなのはその通りなんですよね。人を操ることの快感だよな…巧くやれば、操られるほうも「ラク」なので厄介である。克実さんと斉藤さん、カテコ時にちょっとだけお喋りしてくれるので、劇中とのギャップが、当たり前なんだけどちょっと凄すぎて、役者さんって凄いわ~と陳腐な感想を抱いてしまう。

さて寺西と文ちゃん。2人は教授の実験の餌食になる学生役。

文ちゃん演じる林はすでに壊れている状態から破滅に向かうまで、寺西演じる望月は、心の奥底に隠れていた本音を暴かれてしまい、心が壊れていくまで。振れ幅としては望月のほうが大きいですね。教授の洗脳に触れ、悪魔のように笑い続ける姿は迫力があった。林は最終的に死を選ぶのだけど、その最期の恍惚とした表情がおっかなくて最高でしたね。林の不安定さは波がなく、ずっと陰鬱とした上で解放を求めた先が死であったっぽいのであの表情は考えさせられる。教授の「操られることは果たして悪なのか」というような問いかけが思い出されるな~。

望月は波が大きくて、富田さん演じる精神科医の真中先生とのやりとりの間も受け答えが激しかったり、逆に怖れを見せたりでそれも見応えありましたね。劇場もあまり大きくなかったし、あと私が結構前の座席だったのでめちゃくちゃ迫力あって良かったなぁ。私は寺西名義というか、寺西きっかけでチケットを取ったんだけど、文ちゃんともども、様々なジャンルの舞台に出てくれるお陰でこっちも観たことのないジャンルのものをどんどん観られる。ありがたいことです。

それから演奏も贅沢だった。岩代さんのピアノ、それからプロの音楽家である新倉さんのチェロ、桑山さんのアコーディオン。目の前であの音を聴けるのって贅沢だよなぁ。私は特にストリングスのキンキで育ってるもんだから、チェロのあの地を這うような音色をあんな近くで感じることができたのは贅沢以外の何物でもなかったよ。ありがとうございますほんまに…

重たい話ではあったけれども、カテコやアフタートークなどで感じる、雰囲気の良さもあって大変貴重な作品を観られたなと思っている。やっぱり楽しいねぇ生の舞台は。定期的に行きたくなる。

 

 

 

奏劇vol.3 メトロノーム・デュエット

【8/1昼】前から3列目だったので超近い。寺西、こんな近くで観たことないんじゃ…?(もう覚えていない)鼻筋通ってて切れ長の目で悪魔的に笑うの、怖くて最高だったな。この回は音楽家3人によるアフタートークつき。音メインでのトークは新鮮だった。寺西と文ちゃんの話題も少しだけ。肉襦袢を着ていてもかっこいいと言われる寺西。下ネタにも食いつく文ちゃんと寺西(笑)。突然最後に質問コーナー2問設けてくださって、2つ目の、譜面がどうなってるか知りたい、という質問すごい良かった。当たり前っちゃ当たり前なんだろうけど、演奏と劇が一体化しているので譜面もセリフと楽譜が両方一緒になっているという話。言われてみりゃそのようにしか作れないとは思うけど、考えたことなかったから新鮮だった。

【8/2千穐楽初めて千穐楽に参加するの巻。トリプルカテコまでありました。この日も前日よりは後ろの席だったけれども前のブロックで真ん中少し上手寄り。ダブルカテコからちょうど寺西が上手にいるので、ずっと真正面で寺西を観られたのありがたかった。腕の血管が拝めたのが大変良かったです。トリプルで出てくるとき、もう衣装を脱ごうとしていたのかボタンを留めながらいそいそとちょっと小走りで出てくる寺西可愛かったです。千穐楽ということで1人1人ご挨拶。軽い挨拶でしたが、文ちゃんが「次はvol.88あたりでお願いします」って言ってたので、私もそれ観るためになんとか長生きします。

挨拶では克実さんが、本が手元にあるのに噛む、という話をされて笑いをとっていましたが、朗読劇ってそういうものなんだろうなぁと思いましたよね。とにかく喋る量が半端じゃない。これは一昨年『朗読劇 手紙』を観に行ったとき思った。だからそうやって噛む、ことすら演劇の一部なんだろうと。あとトリプルカテコではもう喋ることない、本編よりトークのほうが長くなっちゃう、今日は8月2日ということで~台風もきており~って話し始める克実さんさすがだった(笑)。斉藤さんとのやりとりもおもしろくて、本当に役者さんのギャップって凄いな~と、また陳腐な感想しか出てこないくらいには圧倒されました。最後は演出の山田さんも舞台に上がってご挨拶。怖い、という感想が自分の目指す方向と一致していたという話をされていましたね。やはり現実と地続きなのが観客にも伝わるからなんじゃないかなー。

 

とにかく新鮮な驚きがある作品でした。音楽には支配力がある、これはある意味納得の言葉だよね。